東北大学 メディカルサイエンス実用化推進委員会

メディエーターインタビュー

「MEDIATOR 領域を超えた研究をつなぐ窓口」 東北大学大学院薬学研究科 生活習慣病治療薬学分野教授 平澤 典保
Vol.02

基礎研究の裾野を広げるような「敷居の低い」連携の役目を担いたい。

様々なフェーズで、人と人をつなぐ

医療・福祉に関する科学・技術の開発を推進するために、医学と工学を融合した「医工学」という領域を確立し、 医薬品・医療機器シーズとニーズを結ぶことが、メディカルサイエンス実用化推進委員会のミッションです。 そして、その連携の窓口となることが我々メディエーターの役目だと考えています。

今までの手法で同じようにやっていたら、同じ結果しか生まれません。 状況をブレークスルーするためには、領域を超えた共同研究の輪を広げていく必要があります。 しかし、それは一人の研究者ではなかなかできることではありませんし、 事業化を考えるとプラスαのプロセスがありますので、現場の研究者にとっては大変な労力が必要になります。 そこで、領域の違う人たちが領域を超えて効率よく効果的に話合いをする、 そのきっかけと場づくりを「メディエーター」として担っていければと思っています。

ひと言で連携と言っても、いろいろなレベルがあります。まずは基礎研究レベルの連携。 これに関しては私に期待されているところかと思っています。 そして池田先生による実用化に向けた臨床試験レベルでの連携や申請における法規制などの調整サポート、 後藤先生による事業化レベルでの連携、と進んでいくと考えています。

基礎研究から臨床研究、そして事業化に向けて、メディエーター間でもしっかり連絡を取り合って、 ステップアップできる連携の仕組みを作りたいと思っています。 また、メディエーターが窓口となって「独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)」や 「知と医療機器創生宮城県エリア」など他機関との間を取り持っていきたいと思います。

薬学の特色を活かし基礎研究をつなぐ

開発段階まで進んでいるものはチームを組みやすいと思いますが、 シーズの段階のチームづくりは簡単ではなく、基礎研究者間のネットワークが必要です。 広く信頼関係を築き上げながらやっていきたいと思います。

私の専門は薬学ですが、薬学というのは、化学物質と人間、医療機器と生物、科学と人間との調和を図る、 言わば人間の立場に立った科学技術のコンダクターとしての役割を持っています。 レギュラトリーサイエンスにおける薬学の役割は、新しい医療技術の開発を進める上でますます重要になってくると思います。 個人的にも、工学部や医学部にも連絡を取り合うような研究者がたくさんいますので、橋渡しのお役に立てるのではと思っています。

現在本業の方では、高度医療を担う次世代型専門薬剤師養成のための実践的臨床薬剤教育システムの構築や 研究者マインドをもった次世代型高度専門薬剤師の育成プログラムの開発に取り組んでいます。 このあたりのノウハウも連携の役に立つと思いますし、人材育成にも貢献できるのではないでしょうか。

底辺から事業化の輪を広げる

学内には、論文を書くことに集中する、という研究者もいますので、埋もれてしまっている素晴らしいシーズもたくさんあるのではと推測します。 メディエーターとして積極的に働きかけて発想を変えてもらい、共同研究による事業化への一歩を踏み出していただければと思っています。

そのためにも、医工連携による成功事例をしっかり発信することが必要です。 事業化まで持っていけるということが分かれば、連携をしたいという研究者が増えるのではないでしょうか。 また、成功例を共有できるようなシンポジウムなどを開催していくことも効果的だと考えています。

ニーズ・シーズのマッチングと言っても、研究者同士の相性もありますから、 テーマに合わせて関連する様々な領域の研究者が実際に膝と膝をつき合わせて議論ができる場・しくみを東北大学の中に作っていくことが必要です。 「何をやりたいか」「何ができるか」という具体的なやりとりをベースに、 基礎研究間での連携から進めていき、底辺から共同研究・事業化の輪を広げていきたいと考えています。

(インタビュー:2014.5.2)

平澤 典保

平澤 典保

東北大学大学院薬学研究科
生活習慣病治療薬学分野教授