東北大学 メディカルサイエンス実用化推進委員会

メディエーターインタビュー

「MEDIATOR 領域を超えた研究をつなぐ窓口」 東北大学病院 臨床研究推進センター 開発推進部門長・特任教授 池田 浩治
Vol.01

臨床研究推進センターと連動し、実用化に向けた様々な支援を実施。

メディカルニーズをシーズ開発につなげる

メディカルサイエンス推進実用化委員会で担当しているところは、 研究協力・シーズ探索部会において、全学に散らばっている医薬品・医療機器のシーズ・ニーズをしっかり見える化することでマッチングの推進をサポートすることです。 異業種・異領域・異文化をつなげ、新しい価値を生みだしていきたいと考えています。

また本務として臨床研究推進センターの開発推進部門に所属していますので、 シーズが成長し、実用化に進んでいくフェーズにおいて、単なる外からの促進サポートではなく、実際の業務の中で支援機能を発揮することが可能です。

技術開発においては、シーズプッシュ(シーズが先導する研究開発)・ニーズプル(社会的課題に基づいた研究開発)のどちらも大切です。 医療機器開発の世界的な流れの中ではニーズプルが重要視されてきていますが、我が国は遅れをとっているという現実があります。 この現状に対応するために政府も課題解決型事業を推進しています。医学系のメディエーターとして、 医学側の医療ニーズをしっかり把握して、技術開発側に伝えていくミッションを果たしていきたいと思っています。

臨床研究推進センターと連動して開発戦略を策定支援

異領域間での意見交換というものは、とても有意義だと思います。 医療ニーズを持った医師と理工学の研究者が一緒にアイデア出しやブレーンストーミングを行うだけで、開発時の問題などのイメージが共有できて、 無駄のない良いものが生み出されます。シリコンバレーなどの医療機器開発の先進地域では異領域間のブレーンストーミングは一般的であり、 「No,but」ではなく「Yes,but」から始めるという方法論が浸透しています。

ディスカッションやコミュニケーションの場をつくり、媒介役となり問題の解決を促していくのがメディエーターの役割です。 ただし、事業化に向けて共同研究を進める段になると、研究内容に沿った具体的な議論になりますので、具体的な事業化に向けたサポートは臨床研究推進センターで行います。 長期ロードマップをつくり、各種基準・ガイドライン等に準拠しながら開発戦略の策定支援、該当する研究費の申請などに合わせた研究の進め方などを提案していきます。 適切な開発戦略を立てることで時間と経費の無駄を防ぐことに加え、効率的に事業化や、薬事承認取得等の最終目標を達成することができます。

私自身が、医療現場と医薬品医療機器総合機構に従事していた経験を持っておりますので、医療機器の話、医療の話、そして行政の考え方や、 医療機器の薬事承認の仕組みも精通していますので、効率的に薬事承認を得るお手伝いができると自負しています。

より早い段階から、アイデアだけでも気軽にご相談を

メディエーターという存在は、まだまだ学内で浸透度が少ないかと思いますが、本当に実用化を目指す方はぜひ来てもらいたいです。 関連業者の方に相談される研究者もいらっしゃいますが、こちらは、よりたくさんの情報を持っていると思っています。 実用化の目処も立っていない、アイデアのレベルでもかまいませんので、ぜひ、その価値を認識して問い合わせしてきてほしいです。 むしろ早い段階の問い合わせの方が、効率的な事業化を提案できるのではと考えています。

現在、メディカルサイエンス実用化推進委員会の研究協力・シーズ探索部会では、 医療の現場でニーズを調査したものを「革新性」や「臨床への影響」などの観点で点数化し、リスト化する作業を進めています。 ぜひ、取りまとめた医療ニーズの情報を広く活用していただきたいですし、工学系若手研究者にも見てもらいたいです。 活発な情報交流が、実用化促進の鍵になると思っています。

メディエーター間の連携も高めていきたいと思っています。現在、平澤先生とは研究費の公募についての情報交換をしています。 また、後藤先生が携わられている「知と医療機器創生宮城県エリア」の動きと連動して、 新製品の実現に向けて地元の中小企業さんに入ってきてもらうなど、具体的な連携の輪を広げていくと面白いのではないでしょうか。

(インタビュー:2014.5.12)

池田 浩治

東北大学病院 臨床研究推進センター
開発推進部門長・特任教授